この日記は個人的設定・考察・気分によるイラストがてんこ盛りです。お気をつけください。
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「人間ってのは、平和な世界のために戦っても、平和になったら争いを求める悲しい性なのかもな……」
「はいはい、黄昏てる暇があるなら逃げてる人達の足留めしてよね」
「りょーかーい」
全然話に乗ってくれなかったモニカの冷めたツッコミに間伸びした返事をしつつ、
俺は倒れた山賊の何人かを跳び越して逃走している残党までの距離を目測する。
本来ならばこの深い森の中、月すら出てない宵闇で残党との距離を判断する事など出来ないが、
事ここに至るまでの様々な事情があり、俺達の背後には
パチパチと木の爆ぜる音を響かせながら山賊のアジトが燃えているため
残党までの距離も、走り去るその小道の脇には
いつ土砂崩れが起きても不思議じゃない崖が存在している事も見えていた。
頭を押さえながら呻いている山賊には刺さらないように注意して
リングウェポンのバスターソードを地面に突き刺す。
ちなみに、倒れている山賊が血を流す事なく頭を押さえている理由は、
俺は三人旅を始めて以来、人間と戦う時は必ず大剣で斬るのではなく
剣を寝かせてハンマーの様に叩いて倒しているからだ。
「俺のリングウェポンって両刃だから峰打ち出来ないけど、これだったら問題ないよね」
と、俺のアイディアをモニカに自慢したのだが、なぜかモニカは
「全く剣術の心得がない人ならいざ知らず、多少腕に覚えがある人なら
バッサリ斬られるより屈辱的な敗戦だと思うわよ」
と呆れていた。
なぜだ。ラミィは「ハリセンだともっといいですよー」と、多分、褒めてくれたのに。
まぁ、それはさておき。
距離を大まかに判断した俺は早口でストーンショットを唱え、
後十秒後ぐらいに残党が走り抜けるだろう場所に
土砂崩れが落ちるように、脇の崖の一部に術を発動させる。
俺の魔力により、近辺の地面が抉られ人間の頭ぐらいの
魔力で硬度が増した土の弾が浮かび上がるやいなや、一気にトップスピードで崖へと一直線。
あー、なんか狙いは確実だと思うけど威力強すぎたかもしれないなぁ、と
頬に一筋冷や汗が垂れるのと同時に
ストーンショットは崖に直撃、一気に発生する土砂崩れ、土煙、轟音。
残党を巻き込みはしなかったが予想以上の量の土砂に
「お、親方ー!!!無事ですかー!!」「し、死ぬかと思ったぜ野郎共ぉぉ!!」と
野太いが情けない悲鳴がここまで聞こえた。
「よ、よーし、予定通り!」
「……術唱えた後、威力間違えて少し焦ったでしょ」
ちっ。誤魔化したけどモニカにばれてた。
「で、でもさ。重傷者はいそうにないし、逃げ道は塞いだから山賊を捕まえるって依頼は成功じゃん?」
「そうね。あそこしか山を下りる道がないものね。さぁ、私達はどうやって帰るの?」
「……ストーンショット応用して土砂崩れ移動させます……」
「あ、あのー……スレインさん、モニカちゃん……」
モニカに叱られている情けない俺に助け舟を出してくれたのは
アワアワと困惑した表情で俺とモニカの背後で世話しなく漂っているラミィだった。
叱られて当然とはいえ、それを止めてくれて感謝するし、後光がさして見えるね。
――後光?
「あの、まだ山賊さんのアジト、燃えっぱなしなんです、けど~」
『あ』
土砂崩れのインパクトがでか過ぎて忘れていたが、
今この一帯が明るいのは背後のでっかいキャンプファイヤーのせいだった。
もしかしたら頬を流れた冷や汗はこの炎の熱気のせいだったんじゃないだろうか。
とか責任転嫁している場合じゃなくて。
「モニカ。あれってブリザードとかでどうにかなると思う?」
「……やらないよりはマシ、じゃない?」
「そうだね」
いくらなんでも、自分で奪った宝を取られたくないからって
逃げる間際に山賊自身がアジトに火をつけるとは思わなかった。
元々魔法ではなく松明を明かりに使っている、所謂昔ながらのアジトだったから
火の回りも速くて蜘蛛の子を散らすように山賊が溢れ出てきたけど。
「山賊を捕まえる依頼だったのに、何で山火事消化や土砂崩れの撤去作業までしなきゃいけないんだろ……」
「火事消化の費用は山賊に請求すればいいでしょ。
多分他の場所にも奪った金品保管してるでしょうし。でも土砂崩れはスレインのせいだから」
「ワカッテマス」
降伏の意を示すとモニカは「ならいいわ」とちょっと満足げに口角を上げた。
なんとなく、完全に記憶が戻ったわけではないけれど、
ピートもそんな風に笑ってた事が多かったような、と思い出す。
だけどそれを伝えるのは憚られたし、
何よりモニカはアイスバレットを唱え始めていたから俺も慌ててアイスバレットを唱え始めた。
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